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Q1 建築計画概要書がない場合どうすればいい? 

いつも二刀流ブログをご覧いただきありがとうございます。

 

私がお世話になっている税理士の知人から宅地の相続税評価に関連して建築計画概要書がない場合の対応についてご質問をいただきましたのでご紹介させていただきます。

■質問


私は、X市で開業している税理士です。令和〇年5月10日にクライアントであるA社の社長甲氏が亡くなりました。

この度、甲氏の家族から甲氏についての相続税申告を依頼され、現在甲氏の自宅土地建物の確認作業をしています。

この土地が接している道路は、X市が管理する幅員3mの市道で建築基準法第42条第2項に規定する道路でした。

道路後退を要する部分(要セットバック部分)がその土地のどこにあり、どの程度の大きさになるのかを確認するため、相続人の妻乙に設計図書の提示を求めましたが、倉庫や貸金庫などを探してみたけれども見当たらないとのことでした。

そこで、X市の建築指導課で建築計画概要書を閲覧しようと思い、窓口に行って確認しましたが、非常に古い建物であるため建築確認台帳に記載がなく、建築計画概要書はないとのことでした。

要セットバック部分の確認もさることながら、所轄の法務局にも建物図面・各階平面図がなく、建物自体の確認も難しい状況です。

何かいい方法はありませんか?

■回答


・建物が非常に古い場合、建築確認の事績はありません。

・建築計画概要書がない場合には、隣接する建物などの建築計画概要書を参考に道路後退線を推測することができる場合があります。

・建物図面・各階平面図がない場合でもその建物が固定資産課税明細書に記載されている場合には、市役所の資産税課などに備えつけられている間取り図などを閲覧する方法があります。

・市役所にも間取り図がないということであれば、現地で測った結果に頼るしかありませんが、設計の単位を知っておくと比較的スムーズに建物の見取り図を作ることができる場合があります。

■解説


(建築確認)

建築確認は、建築物の工事に着手する前にその建築計画が建築基準法令などに適合しているか建築主事の確認を受け、確認済証(※1)の交付を受ける手続きです(建築基準法第6条)。

 

建築基準法は、1950年(昭和25年)に定められた法律ですから、それより前に建てられた建物については建築確認の事績がないということになります。建築確認は原則建築主の義務なのですがこれを受けていない建物についても建築確認の事績はありません。

建築確認を受けた事績がある場合には、建築計画概要書が市町村の建築指導担当部署(※2)に備え付けられ、公衆の閲覧に供されており、その中の配置図に建物と敷地の関係のほか道路の建築基準法種別や要セットバック部分の詳細な位置などが記載されています(※3)。

 

このように建築計画概要書は土地の相続税評価を行ううえで非常に参考になりますが、あくまでも建築計画当時の図面にすぎませんから現場確認を省略してもよいというわけではありませんのでご注意ください。

 

※1:二刀流ブログでは「建築確認済証」といっています。

※2:一部は県の出先機関

※3:多くの場合、設計図書の配置図を縮小したものが貼り付けられています。

(建築計画概要書や設計図書がない場合の要セットバック部分の確認資料)

建築計画概要書や設計図書がない場合、何も参考なる資料がないかというとそうではありません。

 

その土地に隣接している建物など(以下、「隣接建物等」といいます。)が建築確認を受けているのであれば、隣接建物等の建築計画概要書の配置図に記載されている道路中心線や道路後退線を参考にして評価対象となる土地の要セットバック部分を概算できることがあります。

 

下記に簡単なイメージを示しましたので参考にしてください。

〇隣接地の建築計画概要書の配置図から道路後退線を推測するイメージ

不動産の相続税なら新富税理士・不動産鑑定士事務所:建築計画概要書の配置図から道路後退図を推測する

(建物図面・各階平面図、設計図書、建築計画概要書がない場合の建物の確認資料)

建物図面・各階平面図、設計図書、建築計画概要書がなければそれで終わりかとうとそうではありません

 

実は市役所、町村役場(東京は都税事務所。ここでは一括して「市町村役場」といいます。)の資産税課(家屋の課税を担当する部署)に図面が備え付けられていることがあります。

 

市町村役場は固定資産税の課税を行うために固定資産課税台帳(※4)を備え付けていますが、その中に間取り図が添付されていることがあるのです。市町村役場は未登記であっても建物の存在がわかれば、もれなく固定資産税の課税をしなければなりませんので、建物図面・各階平面図や設計図書があろうがなかろうが、現況を調査し、間取り図などを作成・保存し、これに基づいて課税しています。

 

ただし、これらの台帳は、守秘義務により誰でも閲覧させてくれたり、コピーさせてくれたりするものではなく、所有者でなければ委任状の提示を求められることがありますので、二度手間にならないよう注意しましょう(※5)。

 

※4:建物の場合は家屋課税台帳、家屋補充課税台帳からなります。

※5:私は事前に役所に問い合わせてその指示に従うようにしています。

(市町村役場にも間取り図などがない場合)

この場合は、現場で確認するほかありません。

 

厳密には土地家屋調査士、建築士といった専門家に測量してもらうのが一番ですが、概測でいくというのであれば、現場で方眼紙に概測結果を記載していくことである程度カバーできます。

 

木造の建物であれば一間(約1.8m)単位で設計されていることが非常に多いので、がんばればある程度きちんと書けます。

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