· 

二刀流ブログ第9回 「建築確認済証、検査済証」

■はじめに


第5回からつづけてきました、土地評価に必要な図面のご紹介も今回がとりあえず最後になります(※1)。

 

今回は

11.建築確認済証

12.検査済証についてです。

 

毎度のことではありますが、ここで説明しているものは私なりの簡単な理解ですので、詳細につきましては建築関係の専門家の方が書かれた書籍などでご確認ください。

■建築確認済証、検査済証


建築物は、どのようなものでも建てられるというものではなく、都市計画区域などで建てる場合や一定の規模を超える建築物については、原則としてその建築工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合していることについて建築主事または民間の指定検査機関に確認の申請書を提出してその確認を受けなければなりません(※2)。

そして、この確認を受けていることを示す「お墨付き」を「建築確認済証」(以下「確認済証」とします。)といいます。

 

この確認済証をもらってから建築物が建築され、できあがると本当に確認済証どおり建築されているか建築主事又は民間の指定検査機関にチェックしてもらい、「OK」ということであれば、「検査済証」という「お墨付き」がもらえます(※3)。

 

土地の上に建物が建築されたことがなければ、当然存在しないものになりますし、古い建物などの場合ですとどこかに散逸してしまってすぐに見当たらないということもありますが、建物が適法に建築されたことを証明する書類なので、権利証などと一緒にちゃんと金庫などに保管されているということがあります。

 

本来は、土地建物の売買するときに「この建物はちゃんと当時の法令どおり建てられたものですよ。」ということを示すために使う資料ですが、土地の相続税評価の場面においても法務局に正確性に欠ける公図しかないときの欠点(二刀流ブログ第5回参照)などを補ってくれるものになりますので、一緒に勉強していきましょう!

〇確認済証のイメージ(※4)


不動産の相続税なら新富税理士・不動産鑑定士事務所:確認済証

■確認済証のどこをみるか


確認済証には、

1.建築場所など

2.建築物などの概要(建築物の名称、用途、工事種別、延べ面積など)

3.確認を行った確認検査員氏名

などが記載されています。

これだけでは、土地評価に必要な資料はほとんど出てこないのですが、そこにさらに土地建物の概要を詳細に記載した確認申請書(以下、「確認申請書」といいます。)や建築基準法に適合していることを説明する設計図、付近見取図などの図面などが添付されていることが多く、これらの添付書類が使えるということになります。

■確認申請書

確認申請書には、土地の相続税評価で参考になる事項が記載してあります(昔のものだと記載がなく、添付の設計図などに記載してあることがありますので注意してください)。

土地評価の相続税評価で参考になる事項としては次のものがあげられます。

 

1.都市計画区域内か、準都市計画区域内か、都市計画区域外か、市街化区域内か、市街化調整区域内か

2.埋蔵文化財包蔵地に該当するか

3.用途地域

4.建築基準法上接している道路の幅員(セットバック等後)

5.土地面積(敷地面積)

6.基準建ぺい率、基準容積率(※5)

 

例えば1.や3.は地積規模の大きな宅地の評価(財産評価基本通達20-2)ができるかどうかを判定する参考になることがありますし、6.は都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価(同通達24-7)で使う容積率の参考となります。

〇確認申請書のイメージ(表紙)(※4)


不動産の相続税なら新富税理士・不動産鑑定士事務所:建築確認申請書

〇確認申請書のイメージ(土地建物の概要が書いてあるところの例1)(※4)


不動産の相続税なら新富税理士・不動産鑑定士事務所:建築確認申請書2

〇確認申請書のイメージ(土地建物の概要が書いてあるところの例2)(※4)


不動産の相続税なら新富税理士・不動産鑑定士事務所:建築確認申請書3

■設計図、付近見取り図など


これらの図面は、既に二刀流ブログ第8回でご説明した地上建物の設計図書とほぼ同じ内容(又は設計図書の一部)になります。

 

具体的には、

 

・道路の建築基準法の種別

・道路後退(セットバック)部分の位置

・土地がいくつかの用途地域にまたがっている場合の用途地域の境(切れ目)の位置

・都市計画道路の位置

・貸家建付地の評価の賃貸割合の査定で必要な間取り図

 

 

など参考になる情報が「ぎゅうっと」詰まっていますので、活用したいものです。

■建築確認済証の落とし穴


建築確認済証及びその添付資料には参考になる情報がたくさんあるのですが、以下のことに注意することが必要です。

それは、

1.書かれている情報はあくまで確認申請をした時のものであること

2.確認は基本として書面で行われているものであり、実査をともなっていないこと

3.添付の設計図のサイズ

です。

 

1.については、これまでご紹介してきた資料共通の課題なのですが、確認済証および確認申請書、設計図などに記載されている内容は確認申請をした時のもので、相続が開始した日や調査時点であてはまるとは限らないということです。時の経過や法律などの改正により、当然変わっていることがありますので、現地調査及び役所での土地利用規制の確認を必ず行い、相続開始日などの状態をキャッチアップしなければなりません。

 

2.については、確認は机上(きじょう)で行われているにすぎないということです。

実際に建物が確認済証及び添付書類に記載されたとおりに建っているか、土地の接面道路は確認済証及び添付書類どおりに幅員などが確保されているかなどは、確認済⇒完成したあとに行われる建築主事又は民間の指定検査機関のチェックが必要であるということです。

最近は建物の完成後、検査済証をもらっているケースが多いのですが、古い戸建住宅であったりすると検査済証をもらっていないケースが相当数あります。

つまり、確認済証はあるのだけれどチェックを受けていない=検査済証をもらっていない建物がかなりあるのだということです。

従って、確認済証があるだけで安心することなく、チェックを受けたことを証明する書類=検査済証があるかをきちんと確認しましょう(※6)。

そして、検査済証がないのであれば、これがある物件以上に慎重に現場での確認をしなければならいないということになります。

 

3.については、二刀流ブログ第8回でご説明したように設計図はサイズが大きくてA3におさまらないことが結構あるということです。

このため、実際の土地の相続税評価において面倒な作業がでてくることがあります(二刀流ブログ第8回参照)。

〇検査済証のイメージ(※4)


不動産の相続税なら新富税理士・不動産鑑定士事務所:検査済証

■まとめ


1.確認済証、これに添付されている確認申請書、設計図などは建物だけでなく、土地の相続税評価にあたって参考となる情報が書かれています。

 

2.ただし、これらの情報は確認が行われた時点のものですので、現場でのつけあわせ=突合、役所での土地利用規制の調査によって「実際はどうなのか」をきちんと確認しましょう。

 

3.確認済証はあるけれども検査が行われていない建物もよくあります。この場合、確認申請書に書いてある事項の確認は、机上によるものにすぎず、現場でのチェックがないものになりますので、検査済証がある場合よりもさらに注意深く現場でのつけあわせ=突合が必要になりますので注意しましょう。

■参考


※1:これまでご紹介したもののほかに参考になる図面はありますが、相続人の手もとにありそうな、あるいは法務局で取得できそうな書類とはいえないので、それぞれ必要となると見込まれる作業のところでご紹介させていただきます。なにとぞご容赦ください。

 

 

※2:建築基準法第6条第1項、6条の2第1項

なお、この制度ができる前の建築物については適用がありません。

従って、下記※7でご紹介している建築確認台帳にも記載されていません。

 

※3:建築基準法第7条第5項、第7条の2第5項

なお、この制度ができる前の建築物については適用がありません。

従って下記※7でご紹介している建築確認台帳にも記載されていません。

 

※4:あくまでイメージであり、実際の書式とは異なる場合があることに注意してください。また、お示ししたのは比較的新しい書式にもとづくイメージです。古い書式ではさらに体裁が異なる書式になっています。

 

※5:容積率とは建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合をいい、用途地域が定められている場合には用途地域とともに各市役所などの都市計画で定められています。これを指定容積率といいますが、前面道路が4m以上12m未満の場合にはこれよりも小さい率に制限されることがあります。つまり、指定容積率とこの率を比較して低い方が実際に建てられる建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合ということになります。この「実際に建てられる建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合」のことを基準容積率といいます。

また、異なる指定容積率にまたがる土地の場合には、それぞれの容積率が指定された地域に属する土地の面積に応じて加重平均した容積率が「実際に建てられる建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合」となり、この場合にもこれを基準容積率といいます(ここの話はあらめて機会を設けてご紹介します)。

建ぺい率とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合をいい、用途地域が定められている場合には用途地域や容積率とともに各市役所などの都市計画で定められています。これを指定建ぺい率といいますが、一定の角地の場合には建ぺい率が加算されることがあります。この「実際に建てられる建築物の建築面積の敷地面積に対する割合」のことを基準建ぺい率といいます。

また、異なる指定建ぺい率にまたがる土地の場合には、それぞれの建ぺい率が指定された地域に属する土地の面積に応じて加重平均した建ぺい率が「実際に建てられる建築物の建築面積の敷地面積に対する割合」となり、この場合にもこれを基準建ぺい率といいます(ここの話はあらめて機会を設けてご紹介します)。

 

※6:検査済証を取得しているか否かは、建物の所在地を管轄する建築主事がいる役所(大きな市であれば市役所、そうでなければ都道府県の出先機関)の建築指導課などで確認できます。口頭で教えてくたりしますが(※※)、手数料を支払えば証明書も発行してくれます。この証明書のことを建築確認台帳記載事項証明書といいます。

建築確認台帳記載事項証明書とは、建築主事が建築確認を行った事績の概要を示す台帳に記載されている内容を証明するものです。

具体的には、

1.建築主の住所及び氏名

2.地番などの所在

3.主要用途

4.工事種別

5.敷地面積

6.建築面積

7.延べ面積

8.構造及び階数

9.確認済証の交付年月日及びその番号

10.検査済証の交付年月日及びその番号

など

が書かれています。

検査済証を取得していれば、検査済証の交付年月日及びその番号欄に記載がされていますが、取得されていなければ何も記載されていません。

※※口頭ではなく、備え付けの建築確認台帳をそのまま閲覧させて、自分で確認して下さいというところもあるので、実際には窓口の案内に従うことになります。

 

©新富税理士・不動産鑑定士事務所

当事務所の承諾なく、当サイトの内容、テキスト、画像などを転載し、使用することを固く禁止いたします。
また、NAVERまとめ等のまとめサイトへの引用につきましても、これを厳禁いたします。