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二刀流ブログ第6回 「住宅地図の使い方、知っていますか?」

■住宅地図の使い方、知っていますか?


前回は、法務局に備え付けられている図面(公図、地積測量図、建物図面・各階平面図)について説明させていただきました。

今回は、住宅地図の簡単な理解と使い方及び落とし穴について説明していきます(※1)。

みなさんは住宅地図の使い方、知っていますか?

 

前回のブログの内容はこちら

二刀流ブログ第5回 「図面を揃えよう(その1)⇒公図、地積測量図、建物図面・各階平面図」 

 

※1:前回と同様、各図面の簡単な理解は筆者なりの実務上の理解です。厳密な定義については各地図の発行元や各方面の専門家の書籍等をご参照ください。

■住宅地図とは


住宅地図とは、各建物の表札に表示されている居住者がわかるように作製された地図(図面)です。

代表的なのはゼンリンの住宅地図です。

いわゆる住所に基づいて記載され、住居表示(※2)が施行されている地域についてはこの住居表示に基づいて記載されています。

また、マンションや事務所などについても各戸(専有部分)の居住者ができる限り記載されており、その情報収集力には脱帽するばかりです。これらを調査員が現場で確認した結果に基づいて作製しているというのですから、まさに「足で稼ぐ」を地で行くすばらしい地図です。

 

取得の方法は主に書籍(CD)の購入、コンビニエンスストア(セブンイレブン)でのプリントサービスにより取得できます。

 

※2:住居表示

住居表示は読者のみなさんが郵便物に記載する住所とほぼ同一で市町村が決めるものですが、必ず住居表示があるというわけではなく、ないところも多々あります。

また、住居表示は、固定資産税課税明細書や登記事項などの法務局備付書類に記載されている地番(以下「登記地番」といいます。)とは異なります。

従って、固定資産税課税明細書から登記事項などの法務局備付書類から住宅地図にその土地や建物の位置をプロットするためには、その地番の住居表示がいくつなのか確認する必要があります。逆にその不動産の住居表示しかわからない場合には、その住居表示の登記地番がいくつなのか確認しなければ登記事項、公図、地積測量図、建物図面・各階平面図を取得することはできません。

 

住居表示がある場合、その建物の入口などに緑色のプレートで住居表示が記載されていることもあるのですがそういったものがなくわからないこともよくあります。この場合、その地番から住居表示を確認する方法、その住居表示から地番を確認する方法は実務上以下の3つがあります。

 

(1)法務局に出向き、窓口に備え付けられてあるブルーマップで確認する(購入もできます)。

ブルーマップとは、住宅地図に公図を重ねたもので、住居表示、登記地番どちらからも場所がプロットできる「優れモノ」です。

しかし、住居表示が定められている全ての市町村についてブルーマップがあるわけではありません。

 

(2)法務局に出向き、地番と住居表示の対照表で確認する。しかし、この対照表も必ずしも窓口に備え付けられているわけではありません(法務局って国の機関なんですけど情報不十分の感は否めません。仕方ないのかもしれませんが)。

 

(3)市町村の住居表示を扱っている窓口で個別に確認する(住居表示は「住居表示に関する法律」に従って市町村が定めるものですので、当然地番住居表示の対照表があります)。

■住宅地図の使い方


相続税の評価実務上、住宅地図は主に以下のように使います。

 

(1)その不動産の案内図

その不動産が更地でも周辺建物の居住者の情報が記載されているので、ほぼ正確にその不動産の現地に行くことができます。

また、後に詳細に説明する役所調査でもこれを案内図として持参し、公法上の規制を確認していきます。

 

(2)賃貸マンションなどの場合に、各住戸(専有部分)の数や居住者(占有者)の名前がわかります。

賃貸マンションなどの場合には番号が付され、末尾にその番号のマンションなどの各住戸(専有部分)の番号、表札の名前(入居していないなど確認ができないときは空欄)が記載されており、貸家の評価や貸家建付地の評価で必要となる賃貸割合(※3)をざっくりと把握できます。

以下に賃貸割合の把握のイメージを示しましたので参考にしてください。

 

(3)未登記建物の確認

建物図面・各階平面図に描かれていない建物らしきものが描かれていることがあり、未登記建物の存在を推測する手がかりになります(現場においてこの未登記と思われる建物の存否を確実に行えるようになる)。

 

(4)権利関係の確認

住宅地図に記載されている建物の居住者が土地の所有者又は建物の所有者と異なる場合に借地権の存在や借家権の存在を推測する手がかりになります。

 

(5)その宅地が広大地に該当するか否かの判断資料とする。

その宅地が広大地に該当するか否かを判断するためには、その宅地の最も合理的な利用方法が戸建住宅分割素地なのか、マンション適地なのか確認しなければなりません。その前提として過去から現在に至るまでの周辺の土地利用状況を確認する必要があります。

住宅地図は概ね1年ごとに新しいものに更新されていますので、10年分の住宅地図を詳細に確認していくことにより、例えば、「10年前は田んぼや畑ばかりだったけれども、7年くらい前から戸建住宅が増えてきて、最近は地主さんの相続対策アパートもちらほらみられるようになってきた」など、時に経過に伴う周辺の土地利用状況の変遷が確認できます(※4)。

 

※3賃貸割合

相続税の評価上、賃貸されている建物(以下、「貸家」といいます。)やその建物の敷地(その建物所有者と土地所有者が同一の場合に限ります。以下「貸家建付地」といいます。)については、借家権が付着していると考えられることから、貸家については〔自用としての建物価格]から〔借家権×賃貸割合に相当する金額]を控除し、貸家建付地については〔更地としての自用地価格]から〔借地権×借家権×賃貸割合に相当する金額]を控除することとしています(財産評価基本通達93、26)。

 

そして賃貸割合は、

〔Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積合計]÷〔建物の各独立部分の床面積の合計(A)]

で計算することになっています。

 

各独立部分は各住戸(専有部分)とほぼ同じ意味ですので各独立部分の床面積がすべて同じであれば賃貸割合は

〔Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の数の合計]÷〔建物の各独立部分の数の合計(A)]

と置き換えることができます。

 

※4広大地

その宅地の最も合理的な利用方法が戸建住宅分割素地である場合で、分割するとした場合に改めて道路を開設する必要があるときは、相当の費用の負担が見込まれるので、通常の路線価評価よりも大きく評価を減額する規定がありました。これを広大地の評価といいます(改正前の財産評価基本通達24-4)。

しかし、この規定の適用は平成29年12月31日までに相続などにより取得したものに限定されており、現在はこれにかわるものとして地積規模の大きな宅地の評価(財産評価基本通達20-2)が設けられています。地積規模の大きな宅地の評価ではその宅地の最も合理的な利用方法の確認は不要になっていますので、実際に広大地を検討するのは更正の請求で相続税などを還付する場合に限定されます。

〇住宅地図から賃貸割合を把握するイメージ

■住宅地図の落とし穴


住宅地図は、詳細な現地確認に基づいて作製された図面であり、公図などと異なり、それ自体に落とし穴が潜んでいるということはなく、使う側の問題であることがほとんどです。

 

(1)作製年月は課税時期(相続開始時点など)ではない。

ほとんどの住宅地図にはタイトルに「201905」などと記載されています。これは住宅地図の作製時期(2019年5月)を示すもので、この時点による限りにおいて精度が確保されているということです。従って、相続開始時点と住宅地図の作製年月がズレていればズレているほど、その精度は劣ってくるということになります。

 

(2)住宅地図上の土地の外郭を真実の土地の区画割りと誤解してしまう。

一般的な戸建住宅であれば、それでもさほど問題にはならないのですが、実際にはた駐車場部分と建物の敷地部分がわかれていたり、土地の一部しか使っておらず、ほかの土地は他人に使わせている場合などがありますので、必ず、現場において公図、地積測量図などの書類などと照合して、実際の土地の区画割りはどうなっているのか確認する必要があります。

ましてや住宅地図の外郭=筆界(地番と地番の境)ではありません。

 

(3)得られる賃貸割合はあくまで概算に過ぎない。

上記「■住宅地図の使い方」でご紹介した住宅地図から得られる賃貸割合は、あくまで各独立部分の床面積が全て同一の場合に使える割合です。

また、住宅地図における各住戸(専有部分)の内訳欄で居住者のところが空欄であってもそれは、空室だけでなく、入居しているけれども表札に記載がないだけの場合も含まれていますので、賃貸借契約書や設計図書などできちんと確認しましょう。

■まとめ


1:住宅地図の代表例はゼンリンの住宅地図で、主に書籍やCDで購入したり、コンビニエンスストアのプリントサービスを利用して取得します。

 

2:住宅地図は、案内図として利用するだけでなく、

(1)未登記建物などの確認の一助

(2)建物の賃貸状況の確認の一助

(3)土地の占有状況の確認の一助

(4)広大地判定の判断資料の一つ

として使うことができます。

 

3:作成時期と相続開始時点がズレている場合は精度が落ちるので注意しましょう。

 

4:住宅地図は本当の区画割や権利関係を表すものではありません。これらは現場で他の書類と照合しながら確認していくものです。

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